放送大学で学びたいけれど、どのコースを選べばいいか分からずなかなか一歩を踏み出せずにいるかたも少なくないかと思います。
放送大学には教養学部の中に6つの専門コースがあり、それぞれで学べる内容や卒業の難易度が異なります。
目的の資格取得を目指すのか、まずは科目履修生として興味のある分野の単位を試しに取ってみるのか。
自分にぴったりのおすすめコースを見つけるためには、失敗や後悔をしないための情報収集が欠かせません。
「卒業が難しいと聞くけど大丈夫?」「もし合わなかったらコース変更はできるの?」といった、コース選びに関する様々な不安もあるかもしれません。
私も入学前にインターネットでいろいろ情報を調べましたが、入学してみてわかったことというのもいろいろあったんです。
そこでこの記事では、そんなあなたの疑問を一つひとつ解消し、自分に合う学び方を見つけるための放送大学のコースの選び方を様々な角度からまとめてみました。
- 6つのコースそれぞれの特徴と目的別の選び方
- 卒業の難易度や必要な単位に関する具体的な情報
- コース変更や科目履修生といった柔軟な学び方
- 資格取得やキャリアアップに繋がる学習プラン
放送大学のコースの選び方は「なぜ学ぶ?」を考えることから始まる

- 放送大学教養学部に用意されている6つのコースについて
- 仕事や学びに活かすおすすめコース
- キャリアに活かせる資格を取得する
- 放送大学エキスパートで学んだ証を得る
- 卒業に必要な単位数と取得方法
放送大学教養学部に用意されている6つのコースについて

放送大学でコースを選ぶにあたりまず知っておきたいのは、大学に設置されている学部が「教養学部」の一つだけである点です。
そして、教養学部の中に専門分野に応じた6つのコースが用意されています。
これは、特定の専門分野に偏るのではなく、幅広い知識と教養を身につけることを大学が重視しているためです。
学生は6つのコースの中から自身の興味や目的に合ったコースをひとつ選んで所属することになります。
各コースの概要を以下の表にまとめました。
それぞれに特色があり学べる学問領域も多岐にわたりますので、コース選びの最初のステップとして参考にしてください。
コース名 | 主な学習分野 | こんな方におすすめ |
生活と福祉コース | 福祉、介護、健康、看護、社会保障制度など | 介護・福祉業界で働く方、地域社会や家族のあり方に関心がある方 |
心理と教育コース | 心理学全般、教育学、臨床心理学、カウンセリングなど | 人の心や行動、発達、教育に関心がある方、対人援助職を目指す方 |
社会と産業コース | 経済学、経営学、法律、政治、社会学など | ビジネスや社会の仕組みに関心がある方、キャリアアップを目指す社会人 |
人間と文化コース | 哲学、歴史、文学、言語学、文化人類学など | 人文科学や異文化理解に関心がある方、幅広い教養を深めたい方 |
情報コース | 情報科学、プログラミング、ネットワーク、AIなど | ITスキルを身につけたい方、情報技術を活用したいと考えている方 |
自然と環境コース | 物理、化学、生物、地球科学、環境問題など | 自然科学や環境問題に興味がある方、理数系の知識を探求したい方 |
このように、放送大学のコースは非常に多彩です。
自分の興味がどの分野にあるのかを考えることが、コース選びの出発点となります。
仕事や学びに活かすおすすめコース

放送大学で学ぶ目的は人それぞれですが、ここでは代表的な目的に合わせたおすすめのコースを紹介します。
ご自身のキャリアプランや学習動機と照らし合わせながらコース選択のヒントにしてください。
仕事でのキャリアアップや専門知識の習得が目的の場合
現在の仕事に直接活かせる知識やスキルを身につけたい場合、業務内容と関連性の高いコースを選ぶのが効果的です。
- 介護・福祉職の方
「生活と福祉コース」で、福祉制度や介護に関する専門知識を体系的に学ぶことができます。 - 教員・教育関係者の方
「心理と教育コース」で、教育心理学や発達科学の知見を深め、指導に活かすことが可能です。 - 一般企業の会社員の方
「社会と産業コース」では経営や経済、法律を、「情報コース」ではITスキルを学ぶことができ、ビジネスパーソンとしての素養を高められます。
幅広い教養を身につけることが目的の場合
特定の職業に直結させず、純粋に知的好奇心を満たしたい、あるいは幅広い教養を身につけたいという目的であれば、「人間と文化コース」が適していると考えられます。
歴史や哲学、文学といったリベラルアーツ(一般教養)の中心となる学問を深く探求できます。
大卒資格の取得が最優先目的の場合
もちろん、どのコースを選んでも卒業すれば学士(教養)の学位を取得できます。
ただ、もし単位の取得しやすさを少しでも重視するのであれば、「生活と福祉コース」や「人間と文化コース」が選択肢として挙げられることがあります。
これらのコースには、比較的単位認定試験の平均点が高い傾向にある科目や、日常生活と関連付けやすく学習しやすい科目が多いためです。
ただし、これはあくまで一般的な傾向として考えてください。
最も大切なのは、あなた自身が「何を学びたいか」です。
興味の持てる分野でなければ、学習を継続するのは難しいでしょう。

私は経営関係に興味があったので「社会と産業コース」に所属しています。勉強を進めていくうちに情報コースにも興味が湧いてきたので、情報系の科目も履修しています。
キャリアに活かせる資格を取得する


放送大学での学びは、大卒資格だけでなくさまざまな資格取得にも繋げることができます。
キャリアアップを目指す上で、資格取得を視野に入れたコース選びも有効なアプローチです。
以下に放送大学の単位で取得、もしくは、挑戦できる主な資格を挙げてみました。
- 認定心理士
心理学の基礎資格です。放送大学は認定心理士の取得者が非常に多く、必要な単位を体系的に履修できます。「心理と教育コース」に所属するのが一般的です。資格認定を行う公益社団法人日本心理学会のサイトで詳細な要件を確認できます。 - 看護師国家試験の受験資格
7年以上の実務経験を持つ准看護師の方が、放送大学で指定の単位を修得することで、看護師国家試験の受験資格を得る道があります。「生活と福祉コース」の科目が関連します。 - 教員免許状の上位・他教科免許
現職教員の方が、専修免許状や他教科、特別支援学校教諭の免許状を取得するために必要な単位を修得できます。「心理と教育コース」などが関連します。 - 学芸員
博物館の専門職員資格です。放送大学で必要な単位の多くを修得できますが、博物館実習(スクーリング)は提携する他の大学で履修する必要があります。 - 社会福祉主事(任用資格)
公務員として福祉関連の職務に就く際に必要となる資格です。放送大学で指定科目を履修することで要件を満たせます。
放送大学エキスパートで学んだ証を得る


卒業や資格取得とは別に特定の分野を体系的に学んだ証が欲しいという方には「放送大学エキスパート」という制度があります。
これは、大学が指定する科目群(20単位以上)を計画的に履修することで、特定の分野の知識や技能を修得したことを大学が認証し、「認証状」が交付される履修証明制度です。
放送大学エキスパートのメリットは以下の通りです。
- 学習の目標設定に
どの科目を履修すればよいか迷ったときの道しるべになります。 - 学びの体系化
プランに沿って学ぶことで、知識が断片的にならず、体系的な理解に繋がります。 - キャリアへの活用
取得した認証状は履歴書に記載でき、学習意欲や専門性をアピールする材料になります。
プランは「健康福祉指導プラン」や「データサイエンスプラン」、「異文化コミュニケーションプラン」など多岐にわたります。ご自身の興味やキャリアに合わせてプランを選択し、学習のモチベーションを高めるのも良い方法でしょう。
詳しくは、放送大学公式サイトの「放送大学エキスパート」のページで確認できます。
卒業に必要な単位数と取得方法


放送大学を卒業し、「学士(教養)」の学位を得るためには、4年以上在学し、合計で124単位以上を修得する必要があります。
単位には内訳があり、それぞれ必要な単位数を満たすように計画的に履修を進めなくてはなりません。
卒業要件の主な内訳は以下の通りです。
- 基盤科目 14単位以上
- コース科目 76単位以上
- 自コース科目 自身が所属するコースの科目を34単位以上
- 外国語科目 2単位以上
ここで特に注意したいのが、「自コース科目」の34単位です。
これは、自分が選んだ専門コースの科目を必ず34単位以上履修しなければならないというルールです。
つまり、いくら他のコースの科目をたくさん履修してもこの条件を満たさなければ卒業できません。
このため、興味が持てないコースを選んでしまうと、この34単位の修得が大きな負担になる可能性があります。
コース選びが卒業のしやすさに直結すると言われる理由の一つがここにあります。
また、外国語科目は英語のほか、ドイツ語、フランス語、中国語など複数の言語から選択できますが、大学レベルの内容であるため、基礎から学びたい場合はスクーリング(面接授業)を活用するのも一つの手です。
卒業要件の詳細は年度によって変更される可能性もあるため、必ず放送大学の公式サイトや入学案内で最新の情報を確認してください。
放送大学のコースの選び方に関する具体的な疑問点をまとめてみた


- コースごとの卒業難易度は?
- 卒業が難しいコースとその対策
- 入学後のコース変更は可能?
- 柔軟な科目履修生という選択肢
- 学習センターの個別相談会を活用するのもあり
- その他よくある質問と答え
コースごとの卒業難易度は?


コース選びにおいて、多くの方が気にするのが「卒業のしやすさ」、つまり難易度ではないでしょうか。
客観的なデータとして、コースによって単位認定試験の平均点に差が見られるのは事実です。
一般的に卒業しやすい、あるいは、単位が取得しやすいと言われることが多いのは「生活と福祉コース」や「人間と文化コース」です。
これらのコースは、私たちの日常生活や社会と密接に関連したテーマが多く、イメージしやすいため学習に入りやすいと考えられます。
一方で、難易度が高いと感じる方が多いのは「自然と環境コース」です。
このコースで扱う物理、化学、数学といった科目は、高校レベルの基礎知識が前提となることが多く、予備知識がない状態から始めると、学習に苦労する可能性があります。
同様に「情報コース」も、プログラミングなど専門的なスキルが求められるため、人によっては難しく感じられるでしょう。
ただし、これはあくまで一般的な傾向に過ぎません。
最も大切なのは、あなた自身の興味や得意分野です。
理数系が得意な方にとっては「自然と環境コース」が最も楽しく、結果的に卒業しやすいと感じるはずです。
逆に、いくら単位が取りやすいと言われても、興味のない分野の学習を続けるのは苦痛に感じるはず。
ですから、難易度の情報は一つの参考としつつも、最終的には自身の知的好奇心を信じてコースを選ぶことをおすすめします。
卒業が難しいコースとその対策


前述の通り、特に「自然と環境コース」や「情報コース」は他のコースと比べると専門性がやや高いので卒業が難しいと感じる方がいるかもしれません。
しかし、放送大学には、そうした学生をサポートするための仕組みも用意されています。
もし、理数系や情報系のコースに興味はあるけれど自分の学力でついていけるか不安な場合は、以下の対策を検討してみてください。
対策1 入門科目から始める
放送大学のカリキュラムは、初心者でも学べるように段階的に構成されています。
「自然科学はじめの一歩」や「初歩からの〇〇学」といった入門科目が多数用意されており、基礎から着実に知識を積み上げていくことが可能です。
いきなり専門性の高い科目に挑戦するのではなく、まずはこれらの入門科目から履修を始めることで、スムーズに学習へ移行できます。
対策2 過去の単位認定試験を確認する
放送大学の学生になると、学生専用サイト「システムWAKABA」で過去の単位認定試験問題を見ることができます。
これは非常に有用なシステムで、科目登録をする前に、単位認定試験の形式や難易度をあらかじめ確認することが可能です。
過去問を見て、「これなら自分でも解けそうだ」あるいは「少し難しそうだ」と判断することで、履修計画のミスマッチを防げます。
対策3 他のコースの科目を活用する
卒業要件の項目でも触れましたが、卒業に必要な124単位のうち自コースの科目は34単位以上です。
残りの単位は、他のコースの科目から自由に選ぶことができます。
苦手な分野の科目ばかりを履修するのではなく、得意な分野や興味のある他コースの科目と組み合わせることで、学習の負担を分散させ、モチベーションを維持しやすくなります。
難しいとされるコースであっても、これらの仕組みをうまく活用すれば、卒業への道は十分に開かれています。
入学後のコース変更は可能?


熱心に考えてコースを選んだとしても、学習を進めるうちに関心が別の分野に移ることは十分にあり得ます。
「コース選びに失敗したらどうしよう」という不安は、多くの方が抱くものでしょう。
しかし、放送大学では入学後にコース変更することができるのです。
コース変更の手続きと注意点については以下の通り。
- 手続き方法
コース変更は、学生専用サイト「システムWAKABA」からオンラインで申請できます。手続き自体は比較的簡単です。 - 申請時期
コース変更ができる時期は決められています。通常、年に2回(春と秋)申請期間が設けられており、その期間内に手続きをすれば、次の学期から新しいコースに所属できます。学期の途中で変更することはできません。 - 審査
変更の申請には審査があります。各コースの学生数を考慮した上で変更が認められるため、必ずしも希望通りに変更できるとは限りませんが、多くの場合は認められるようです。 - 注意点
卒業研究を履修中の学生は、コース変更ができないというルールがあります。
このように、興味の変化に応じて学びの軌道修正ができるのは、放送大学の大きなメリットの一つです。
最初のコース選びは重要ですが、一度決めたら変えられないというわけではないので、少し気持ちを楽にして選ぶことができるでしょう。



実は私も「社会と産業コース」から「情報コース」に所属を変えようかと思っていたりします。
柔軟な科目履修生という選択肢もある


放送大学での学び方は、卒業を目指す「全科履修生」だけではありません。
もし、「特定のコースに所属して124単位を取るのは大変そう」「まずは興味のあることだけ少し学んでみたい」と感じるなら、「選科履修生」や「科目履修生」という選択肢を検討する価値があります。
これらは、卒業を目的とせずに好きな科目を1科目から自由に選んで履修できる学生の種類です。
以下にメリットと注意点についてまとめてみました。
- 手軽に始められる
1科目から履修できるため、時間的・経済的な負担が少なく気軽に大学の学びを体験できます。 - 興味の確認に
どのコースが自分に合っているか分からない場合、まずはいろいろなコースの科目を履修してみて本当に学びたい分野を見極めるという使い方ができます。 - キャリアアップに直結
仕事に必要な知識だけをピンポイントで学ぶといった目的にも適しています。 - 在学期間: 科目履修生は半年間、選科履修生は1年間です。継続して学びたい場合は再度出願が必要です。
- 学位
これらの学生種では、当然ながら卒業はできず学士の学位も取得できません。
もし将来的に全科履修生に移行した場合、修得した単位は卒業要件の単位として認められます。
コース選びのお試し期間として、この制度を活用するのは非常に賢い方法と言えます。
学習センターの個別相談会を活用するのもあり


ここまで様々な情報を提供してきましたが、それでも一人で決めるのは難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
そんなときに頼りになるのが、全国47都道府県に設置されている「学習センター」の存在です。
学習センターでは、入学を検討している方向けにオープンキャンパスや個別相談会を随時開催しています。
個別相談会でできることを以下にまとめてみました。
- コース選びの相談
自分の興味や目的、状況を直接伝え、どのコースが合っているかアドバイスをもらうことができます。 - 履修計画のシミュレーション
具体的な履修プランについて相談に乗ってもらえます。特に、他の学校からの編入学や、資格取得を目指す場合の複雑な単位計算など、専門的な相談も可能です。 - 大学の雰囲気を感じる
実際に施設を見学したり、他の学生の様子を見たりすることで、入学後の学習生活を具体的にイメージできます。
インターネットやパンフレットの情報だけでは分からない、細かな疑問や不安を解消するには、直接人に話を聞くのが一番です。
コース選びで迷ったら、ぜひ一度、お近くの学習センターに足を運んでみることをお勧めします。
その他よくある質問と答え
最後に後悔しない放送大学のコースの選び方についてまとめます
この記事では、放送大学のコース選びについて様々な角度から解説してきました。
最後に、後悔しないコース選びのための重要なポイントをまとめます。
- 放送大学には教養学部に6つの専門コースがある
- コース選びは自分の興味や学習目的を明確にすることが第一歩
- 仕事に活かす目的なら社会と産業や情報コースなどが考えられる
- 単位の取りやすさを重視するなら生活と福祉コースが選択肢に
- 卒業には合計124単位の修得が必要
- 所属するコースから最低34単位を履修する必要がある
- 理数系の知識が求められる自然と環境コースは難易度が高い傾向
- 文系で一般教養を深めたいなら人間と文化コースが学びやすい
- 認定心理士などの資格取得も可能だが条件を事前に確認する
- 学びの証明となるエキスパート制度もキャリアに活かせる
- もしコース選びに失敗しても入学後にコース変更が可能
- 卒業にこだわらず好きな科目だけ学べる科目履修生制度もある
- 迷ったときは全国の学習センターで個別相談ができる
- 最終的には自分に合った学び方を見つけることが最も大切
放送大学は、多様な学びのニーズに応える非常に柔軟なシステムを持っています。
この記事があなたのコース選びの一助となり、充実した大学生活への第一歩となることを願っています。

